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(2月上旬発売)能勢伊勢雄入門近刊

能勢伊勢雄/聞き手・軸原ヨウスケ(COCHAE)
ISBN 978-4-908465-29-1
A5判並製・384ページ・モノクロ
定価 3,000円+税
戦後日本のアンダーグラウンド教典ともいうべき博覧強記の書
1974年創業、岡山の老舗ライブハウスPEPPER LAND。オーナーの能勢伊勢雄は、前衛映像作家、写真家、音楽・美術評論家、現代美術展企画等も行う。岡山出身で1978年生まれのデザイナー・軸原ヨウスケ(「アウト・オブ・民藝」)は、延べ25時間にわたるロングインタビューを敢行!……能勢伊勢雄が自らの実践を時代ごとに振り返り、出会った人々の思想や言葉、音楽・映像・書物などの膨大な資料と記憶をたよりに、中央からしか語られてこなかった戦後日本のカルチャーを岡山から語り尽くす。本書は、下段に脚注を設け、作品・人物・事柄に簡単な解説を付している。発行:COCHAE 発売:大福書林

目次
はじめに  軸原ヨウスケ
第1章 ペパーランド以前 少年期~実験映画の時代 1947-1974
第2章 岡山芸能懇話会 戦後岡山の文化復興 1945-
第3章 岡大闘争の時代 共同性の地平を求めて 1969-
第4章 ペパーランドの始まり 1974-1988
第5章 第三期以降のペパーランドとこれから 1989-
おわりに アウト・オブ・ヘドニズム 能勢伊勢雄
付録 岡山文化年表(1947-1974)

能勢伊勢雄 1947年生まれ。写真家。前衛映像作家。音楽・美術評論家(批評)。現代美術展企画等。さまざまな表現の交錯する場として、1974 年に老舗 Live House「PEPPERLAND」を設立。松岡正剛氏のオブジェクトマガジン「遊」に70 年代から参画。阿木譲編集の「ロックマガジン」の編集やライターを務めた。2018 年福武教育文化財団より「福武文化賞」受賞。2019 年慶應義塾大学アート・センターに作品収蔵。

能勢伊勢雄氏の「おわりに」を公開中。(別のタグが開きます)
おわりに アウト・オブ・ヘドニズム(能勢伊勢雄)

+推薦文+

宇川直宏(DOMMUNE)

博覧強記な奇書の降臨である。1974年、岡山県岡山市。能勢伊勢雄氏が立ち上げた“ペパーランド”という場が、ライヴハウスや上映空間の機能を超え、如何にして思想的かつ実践的なメディア装置として展開していったのか?その生成のプロセスがこの書『能勢伊勢雄入門』には刻まれている。能勢氏の語りから立ち上がるのは、ダダ、アクショニスムズ、ハプニング、エクスパンデッドシネマといった前衛芸術の形式だけではない。寧ろそれらを必然として要請した身体・都市・制度への根源的な違和感である。全裸でフルートを吹きながら岡山駅前の横断歩道を渡ること。三足のわらじを履きつつも反万博運動を実践すること。ジッピーコミューンを運営し、列島全域からビートニクを召喚すること。そしてコピーライトや既存のディストリビューションを無視して積極的転用を遂行すること。
これらのエクストリームなアクションは、能勢氏にとっては、社会のルールを一旦停止させ、現実を一時的自律ゾーンへと逸脱させるための最短で直接的な方法だったのだ。

ここで決定的なのは、氏の実践が制度内部ではなく、地方都市・岡山の日常空間そのものから立ち上がっているという事実である。在郷であるがゆえに、中央の文化資本主義に対して明確な距離を取り得たこと。だからこそ、岡山というローカルな地平において、パラマーケット・スペクタクルが、より生々しい身体性を伴って噴出しているのだ。
また本書では、シチュアシオニスム/ギー・ドゥボールの思想が、岡山的コンテクストにおいてどのように転用され、実践へと変換されたかが示唆される。能勢氏の言う“積極的転用”とは、単なる引用や盗用ではない。それは、既存のイメージや制度を共犯的に裏切るための戦略であり、のちの日本オルタナティヴ文化に通底する態度でもある。そう岡山アンダーグラウンドは能勢伊勢雄氏によって開墾されたのである!!!!!!!  ゆえにペパーランドとは、出来事が発酵し、制度化前夜のカルチャーがカオティックに反乱する為の文化的エコシステムなのだ!!!!!!!

ルドルフ・シュタイナー、出口王仁三郎、アルバート・ホフマン、ヨーゼフ・ボイス、ギー・ドゥボール、スチュアート・ブランド、阿部ビート、ティモシー・リアリー、ジェネシス・P・オリッジ、ジーン・ヤングブラッド、ダグラス・ラシュコフ 、ロバート・アントン・ウィルソン、ハキム・ベイ、アラン・チューリング、R ・U・シリアス、ユナリアス、ドナ・コッシー、そしてラメルジー…… この書では、これら史上空前のコンテクストが、戦後岡山の文化復興期における岡山芸能懇話会や、岡大闘争の時代と接続し、博覧強記な文化的視座をもって、岡山弁を織り交ぜながら、能勢氏自らの声帯を震わせ記述されていく。しかし、これら傑物に対しての言及は決して統合編集されない。常に未整理のまま併存し、語りは生々しく逸脱し、ノイズを孕む。それでもなお、全ては奇想宇宙の必然であったかのように、不可逆的に繋がっている。このカオスモスこそが、オルタナティヴ・カルチャーの生命線であり、記録されるべきリアリティなのだ。ここに紙とインクで記されたアルカイック・モダーンな知の反乱こそが、制度化されないための条件であるかのように。

そして何より仰天したのは能勢伊勢雄氏と私自身の人生の肥やしが、ここまで重なり合っていたという事実だ。読めば読むほど、かつて体験したテクスト群が側頭葉から降りてきて、自らのエゴ=アイデンティティの根や幹を形成した養分として再活性化する!! これは、松岡正剛氏、能勢伊勢雄氏、武田崇元氏、武邑光裕氏、そして私、宇川直宏が、暗黙のうちに共有してきた教義体系そのものではないか!!!!!!! アウト・オブ・ヘドニズム!!!!!!!  本書『能勢伊勢雄入門』は、氏の自伝であると同時に、シチュアシオン/ビートニク/サイケデリック/オカルティック/エクスパンデッド/サイベリア/レイヴ/スーパーナチュラル・カルチャーの、純潔で正統なコンテクストそのものだ。もしや、アカシックレコードは吉備国に存在していたのかもしれない!!!!!!  


赤田祐一(「スペクテイター」編集者)

カウンターカルチャー的なことをやっている人には、ふたつのタイプがある。ひとつはコマーシャルにやって成功して社会の本流に上昇していこうとするタイプであり、もういっぽうは、新たな世界の方向性をまさぐりながらラジカルなことをやり続け、マスの商業的成功にはこだわらない。たとえ、その内容や形式がくみとられなかったとしても、それはそれでいいと考えるようなタイプである。

後者を説明する言葉が UNDERGROUND(地下的存在)と呼ばれるもので、ルイス・ジャコブスが一九五九年、「フィルム・カルチャー」誌上で、自分の論文のなかで精神的な意味を込めて、個人映画の文脈で初めて用いたとされている。この話は、『スペクタクル 能勢伊勢雄』という本で教わった。能勢さんは  UNDERGROUD を“生の信念”として抱く人だ。ペパーランド創業時から UNDERGROUND を第一の基準と定め、その言葉を店名に繰り入れて以来、新しいカルチャーの方向性をまさぐりながら最先端の文化活動を展開することから、いまも多くの人たちに刺激を与え続けている。

不肖、小生も「ロックマガジン」「EGO」などで、能勢さんの評論に新しさと決意を感じ、鼓舞され続けてきたものの一人である。能勢さんの軌跡をたどったこのオーラル・バイオグラフィーの本質を示すならば、UNDERGROUND SPIRIT にほかならないと思っている。