Round 1のつづき
ふじもと
		 また書道系ですよ〜 
		
ふじもと
		 縦棒がすごいところから降りてきた。 
		まつむら
		 「は」??
		ふじもと
		 オイリーですよね。筆致が。きわめて潤滑感がある。
		まつむら
		 よその国の文字みたい 
		ふじもと
		 全体図、こうですね。
		
ふじもと
		凄いシルエットですよねー。僕はなんとなく、これを感じました⬇︎

ふじもと
		なんか似てませんか (笑)
		まつむら
		 (笑)ロゴ全体のシルエットもね。
		ふじもと
		 鮨ティーナ礼拝堂……。
		まつむら
		 うまそー(笑) ぼくはこれ見つけても撮らなかったかも。撮れなかったかも。
		ふじもと
		和食屋さんとか寿司屋さんとかが、自分の中で「熱いジャンル」になるとは、今まであんまり思いませんでしたね〜(笑)。次どうぞっ。
		まつむら
		 では特に関連はありませんが。 
		

まつむら
		 これは「ュ」です。
		ふじもと
		 ネオン管のくねりに目をやると、ホントおもしろい。書き順にまったく関係なく存在する、「そのかたちに光らせるためのストローク」。
		まつむら
		 ですよね。ヨドバシカメラの前を通るといまだにそこを見ちゃいます。 
		
まつむら
		見にくいかと思いますが、「タランチュラ3F」。
		
ふじもと
		スゲーーーッ! まるでタランチュラが出てこないように処置したかのような厳重な全面アクリル張りだ。
		まつむら
		 アクリルの汚れと相まって怖すぎます。
		ふじもと
		囲うことも「タランチュラ感」表現のひとつのキモになってる、みたいな(笑)これ、下端のアクリルが割れてたり、ヒビがはいってたりすると、迫力倍増ですね。
		まつむら
		(タランチュラの)檻ですか! 営業してるかどうか、確認できませんでしたが、遺産レベルですよね。「残っててくれてありがとう!」と思いました。
		ふじもと
		 すごいなーこれは相当な出物ですよ……土浦……。 
		まつむら
		 土浦駅から、徒歩5分とかからないとこです。 
		ふじもと
		 僕は新しい町にたどりつくとまずGoogle Mapsに「バー」とか「スナック」と入れて、赤いピンがたくさん落ちる場所を目指すんですよね。 
		まつむら
		 ああ、その方法があったか。
		ふじもと
		 赤いピンの群れをザッと見て、密度が濃いところ。そこには必ず出物がある。そこを中心にして、周りを放射状に見て歩くことが多いです。 
		まつむら
		 ぼくは「商店街」から探しちゃうんですよ〜。さて、次をおねがいします。 
		
ふじもと
		この「い」は昔から好きで、今回真っ正面から、目線レベルでパースなしで撮れたので、嬉しかったんです。
		まつむら
		 恐怖……。 
		ふじもと
		 そこはかとない恐怖感ありますよね。 
		
まつむら
		 配色に引っぱられてますが(笑)。滝平二郎系ですね。収まりがよいなー。 
		ふじもと
		 ほかの文字も恐怖なんですよー。手書きの「番」には情念こもってます。 
		だいふく
		お二人はどこらへんに恐怖を感じるんでしょう?
		ふじもと
		なんだろう……手書きゆえの、けっしてナイスバランスとはいえないようなレタリングに、トラウマちっくな怖さを感じることがあるんです昔から。幼い頃に見たテレビ番組のCMタイムの手書き提供各社フリップとか。むかしのNHKの5分ニュースの手書き丸ゴシック見だしフリップとか。
		まつむら
		わかります! 今みると味わい深くていいんだけど、当時怖かったなー。5秒くらい無音で表示される手書き文字の「来週もお楽しみに!」や、放送事故中の「しばらくお待ちください」の画面とか。ほんと、「番」の字の活字ではありえないバランスが魅力的ですよね。
		ふじもと
		写植やフォントの、キリッキリにプロが何年もかけてチューンしていった、ウェル・バランスドな書体における、文字内の各要素の位置関係力関係って、ある程度決まっていて、安心して見られる、安心して読める感じがあるんですが、手書きのレタリングにはそれがない。足場の不安定感というようなものを感じちゃって。
		まつむら
		 でもロゴとしての強さはピカイチですよね。 
		ふじもと
		 そのなんとなくの怖さが一周まわって最高にカッコイイのです、今(笑) 
		だいふく
		今はそう見えるんですね。
		ふじもと
		そうですねー。明朝フォントをアウトラインとって、この「いの一番」と同じレイアウトにならべても、この味わいの濃さは絶対出ません。だけに悔しい! 
		まつむら
		 詠み人の息づかいまで伝わってくるような。年をとるとそんな人間くささに惹かれていくんですかね。 
		ふじもと
		以前の自分は予想もできなかった方向性ですね(笑)。こうしたレタリング文字、好きは好きでしたが、だんだん興味の中心部分を侵蝕してきつつあります。さて、次を。
		まつむら
		 では、ネオンの世界に戻ります(笑) 
		

まつむら
		ネオンが多層になってて読みにくいので、それぞれをトレースしてみました。
		
ふじもと
		 これはまたすごい出物ですよ… 
		まつむら
		 イベント会場限定だと思ってたのでいい加減なトレースでごめんなさい(笑) 
		
まつむら
		 「星うらない」と「ダウンタウン」だと判明しました! 
		ふじもと
		 星うらない/ダウンタウン のふたつが交互に点灯してたんでしょうか……。 
		まつむら
		 ええ、同時点灯はないと思うんですよ、これ。 
		
ふじもと
		 よく見るとどちらのワードにも属さない、文字のストロークを斜めに横断する棒のようなエレメントが飛び交ってますよね。 
		まつむら
		 斜め線はうしろの星のものかと思ってましたが、どうでしょう 
		ふじもと
		 あ! あ! そうか、これ、うしろのでっかい★か!! 
		まつむら
		 です、です。 
		ふじもと
		 いやぁこりゃ夜も見たい物件だなぁ 
		まつむら
		 ね。夜も見てみたいんですが、営業してたかなー。 これもタランチュラに近い場所にあって、勝利を確信した1枚でした。 
		ふじもと
		 強打者すぎる……。 
		まつむら
		 勝ち負けはないんですけどね(笑)80年代に流行ったファンシーの文法満載ってとこで、次お願いします。
		ふじもと
		 僕も、ちょっと勝利を確信させる手応えを感じた文字、いきますよ。 
		
まつむら
		 これは印象深い一文字ですよー 
		ふじもと
		 これは函館ならでは、というものがありました。 
		
ふじもと
		まさか「海鮮フォント」とかじゃあないですよねぇ!?
		まつむら
		 ひょっとして粒々は「いくら」? 
		ふじもと
		そ〜〜〜。イクラがあしらわれてます。函館の市場、6時前後の早朝に歩いて見つけました。そしてこれは考えすぎかもですが、イクラ以外の文字のメイン部分、この入りと抜きの感じ…何かに似ている。
		
An Alaskan red king crab in the permanent collection of The Children’s Museum of Indianapolis.
まつむら
		 !
		ふじもと
		 蟹感ありませんか、これ(笑) 
		まつむら
		 だから節があるのか!? 
		ふじもと
		 全景です。 
		
まつむら
		 カニ&イクラの線、濃厚ですね。 
		ふじもと
		 PCの画面上でフォントを打ち込んで作ってる感満点の文字たちの百鬼夜行のような状態。そこにこの「すずや」です。「うぉっ!」ってなりました。
		まつむら
		 光ってますねー。この位置からでも。 
		ふじもと
		webで検索すると、同じ場所を、過去に別の方が撮った写真が出てきます。横書きもあったんですね!
		まつむら
		 え、え、なんだ白いのは? 
		ふじもと
		 これ謎ですね…白いシャドウ(笑) 
		まつむら
		 一文字ずつ楕円を添える作法は、昔よく見ましたが……。そして藤本さん、朝一でどんぶり? 勝手丼は食べたんですか?
		ふじもと
		僕ね〜〜〜北海道生まれなのに、海鮮もの全然好きじゃなくてですね〜〜〜。観光客が続々と現れ始める時間に、蟹にも雲丹にもイクラにも目もくれず、ただただ文字を追ってました(笑)
		だいふく
		そうなんですか!
		ふじもと
		 變態ですね〜我ながら。 
		まつむら
		 一人で出かけてるとそうなりがちですよねー 
		ふじもと
		 しかし、ご当地特色がおもいっきり表れた文字が見られて、この出合いはよかったですね。
		まつむら
		 五十音の他の文字も、ちょっと見てみたくなります。 
		ふじもと
		 これがもしフォントだったら…と思うとぞっとしますが見てはみたい(笑)。識者からのツッコミを震えて待つことにします。 
		まつむら
		 2色なのでさすがにないかと思うんですが…把握できないですもんね。市井の和文フォントも。
		
ふじもと
		 コーヒー噴いた。 
		まつむら
		 やった(笑) 
		
ふじもと
		 ツョーヅ!!! 
		まつむら
		 ツョーヅではありません(笑) 
		
ふじもと
		 ショージですね(笑) 
		
まつむら
		店名もユニークなんですけど、「シ」はこうする他なかったのか。
		
↑藤本さん、すかさず見本を作成
ふじもと
		なぜこうしなかったのか、と思ってしまいますが、それをいっちゃあおしまいよ案件だ!!!!
		まつむら
		 仕事が早い(笑) 
		ふじもと
		え〜〜〜〜でもこれ「カット」の「ッ」が……。いやこれ、のどかさん(*松村さんのこと)、ツョーヅさんですよ! 間違いない。
		まつむら
		 いやいやいや。 
		ふじもと
		 ツョーヅ・ルンドブラードさん、的な、スウェーデンの方とかですよ。 
		ふじもと
		 (そんなわけあるか) 
		まつむら
		 (笑) 
		
ふじもと
		 うおおおお。そうか、ここの処理が違う! 
		まつむら
		 ここんとこの処理で「ツ」と「シ」を区別してるんですね。 
		ふじもと
		 も、ものすごいオリジナルルールだ……! 
		まつむら
		Twitterでも「#ソンシツ物件」というハッシュタグがあるくらい「ソ」と「ン」、「シ」と「ツ」の書き分けは話題になるテーマですよね。大人になっても書き分けられない人が多い。
		ふじもと
		ましてやスウェーデンの方ともなれば書き分けられないのも当然。(そういう話じゃない) 
		まつむら
		 (笑) 
		ふじもと
		いやしかし冗談ぬきで、我々路上タイポ観察者は、このようなすばらしいまち文字に出会う事を毎日夢見て歩いているわけですよ……。こんな物件、何枚も撮っちゃうわ! いろんな角度から!
		まつむら
		 そしたらこれ、十番勝負の前にハッシュタグ「イイカナカタカナ」に投稿されてきたんですよ! 取材の後に。 
		ふじもと
		ホント思うんですけどね。これはtwitter日本語ハッシュタグ実装以降、路上観察界に革命が起こったように感じます。まるで会員証のない秘密結社のごとく、日本中に路上観察者のネットワークができた。
		まつむら
		 ほんとそうですよね。これからもテーマごとにどんどん細分化されていきそう 
		ふじもと
		その、日本列島を記述するあたらしいレイヤーの中では、今まで誰も目にもとめなかったような字が「その町の名所・名物」になってる。この話最近好きなので何度もしますが(笑)「土浦といえばタランチュラでしょう!」とか。
		だいふく
		尾道のあの毛糸のお店みたいに、ですね!
		ふじもと
		 「尾道行かれたんですか! ひばり毛糸店※はご覧になられましたか?」みたいな(笑)
		※『タイポさんぽ 改』に掲載されています
まつむら
		 「ひばり毛糸店」はまさにそれですね。「聖地」と呼んで差し支えない。 
		ふじもと
		 ちょっと門外漢からするとどうかして見えるような、まったくあたらしい日本地図が出来上がりつつある。 
		まつむら
		 そんな地図が売ってたらほしい! 大福書林さんで作ってくれないかなー 
		ふじもと
		 これ、昨今話題のポケモンGOが奇しくも同じで、その結社に参入してない人には見えてない、別レイヤー(笑) 
		まつむら
		 そっかー。それは看板文字に限らず、それぞれの嗜好に応じたそれぞれの地図があるということですね。 
		ふじもと
		 では僕も、これは函館の新名所なんじゃないの!という物件を出しますよ。 
		
ふじもと
		これは確実にポケモン湧きますね。周囲にね。
		
まつむら
		 ルアータイポ(笑) 
		ふじもと
		お察しのとおり「ち」と「ょ」のリガチャ(合字)なんですが。「ちょ」って文字で書くと2文字ですが、音としては1つじゃないですか。これ、「1モーラ」っていうんですが、「あ・か・ちょ・う・ち・ん」で6モーラのワードなんですよね。なのに、なぜか「うち」までもが合字化されている。
		まつむら
		 「うち」がね、なんなんでしょうね 
		
ふじもと
		 リガチャで分かりやすいのはこの画像ですね 
		まつむら
		 ヨコ組みにたて組みのリガチャが含まれると脳がやや混乱して、とても印象に残るような気がします。そんな狙いですかね? 
		ふじもと
		 拙著『タイポさんぽ』編集者の室賀さんは、「これはもともとタテ書きの看板があって、そのテイストをたもったまま横書き看板を作った結果か…?」という説を提唱されてました。
		まつむら
		 あー、その線は濃厚ですね。いずれにしてもとても酔い、良いバランスです。「北海の味」「ろばた焼」も好き! 
		ふじもと
		 そこで「函館あかちょうちん」で画像検索をかけてみますと……さらに驚くべき事実が……
		↓こちらslylark kakako氏が撮影していたもの
まつむら
		 ええええーーーーー 
		ふじもと
		同じ店の別アングル。僕が横書き看板に見とれて、すっかり発見し忘れていたタテ書き看板が、すぐヨコにあったのです。しかしここではさらに壮絶なリガチャ化が(笑)
		まつむら
		 すばらしーーー! 
		ふじもと
		これはあかん。「ちょうち」で一文字になって「あかん」みたいなことになっている。すごいですねえ!
		まつむら
		意味はまったくわかりませんが、感動した! タコのサイドに見える細長いパートでは、さすがに再現できなかったようですね。
		ふじもと
		たまりませんね。タコのイラストつき看板のサイドは、それでもリガチャ化が見られない。そうなるとやっぱり、限られたスペースの中で書く上で、ああなったんですかね。
		まつむら
		 縦長にして、余白を作りたくなかった、と。 
		ふじもと
		 これ、すごいことですよ。「スペース足りたいけど文字はでっかく書きたいんだったら、どこかくっつけて合字にしてスペース稼げばいいじゃん?」っていうことですよ。
		まつむら
		 真相はわかりませんが、そうだとしたら独創的ですよね。 
		ふじもと
		安易にバカみたいな長体かけたり、読めないよ!ってくらいの平体かけちゃったり、とかくタイポグラフィのデジタル化以降、よくよく見られるようになった逃げ方がありますけど、こんな合字を生み出してスペースを確保する、なんてちょっと目から鱗。勉強になります(笑)
		まつむら
		 ですよねー。タコ横の「ちょうち」も律儀にちょい小さくしてある部分に、こだわりを感じます。 
		ふじもと
		やっぱり「あか」を強く大きく言いたいんですよね。あかちょうちんのキモですもんね。そして最後の〆となる「ん」も、同じ大きさになってくれてないとしまらない。ここには「阿吽」が成立している……。
		まつむら
		 飲み屋看板の作法、整理して学んでみたいなー。 
		ふじもと
		「あじかん」さんとおなじく、アではじまり、ンで終わる東洋の宇宙観……それを肴に地元の酒をだな……。いっしょに函館にいく機会があったらぜひここで飲みましょう。きっと待っててくれるはずです。このお店なら。
		まつむら
		 いいですねーー! でも帯広・函館の移動って相当大変なんですよね? 
		ふじもと
		本当は僕もまだまだ見られてない通りも多くて、機会を作ってまた行きたいんですよね、函館〜。台湾へいくよりずっと遠く感じましたね。6時間半かかりました(笑)あれは飛行機を使う距離(笑)さあ次いってみましょうか。
		まつむら
		 行きましょ、行きましょ。 
		Round 3へつづく!
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